福島市で古民家の設計・施工を手掛けました。
本物件は築150年の歴史を持つ建物で、福島市中心部から30分ほどの自然豊かな場所にあります。
我々は設計・施工をする上でこの場所に刻まれた時の流れを大切にし、次世代に繋いでいけるような場所を目指しました。
100年先も残る場所を目指して
素材や工法について
この建物は合掌造りの茅葺屋根、漆黒塗の柱梁、竹でつくられた垂木など、日本古来の伝統技術が詰まっておりできる限り、素材・工法を残せるように計画を進めました。
私たちの古民家再生の取り組み方としては、古いものを解体し新しく造り替えるのではなく、
既存の柱や梁、壁の仕上げを極力残しつつ、新しい素材を使用する場合であっても既存の仕上げと馴染むような素材選定を意識して行いました。
建築を通じて時を感じること
福島県北地方は江戸時代から養蚕業が盛んで、本物件でも養蚕をしていた歴史がありました。
その為、屋根の棟には煙抜きの開口があったり、内部の土壁仕上げは燻されて黒ずんでいたりと、建物の造りや壁の質感からその頃の時の流れを感じることができます。
建物を巡ることで時の流れを知ることができる体験がここにはありました。
プランニングについて
プランの構成としては、居住スペースと土間スペースの2つのゾーンに大きく分かれています。
建物規模としては延べ床面積が200㎡ほどありますが、家族構成やライフスタイルの変化により、すべての居室を使用する必要がなくなった為、ゾーニング分けをして多様な居住方法へ対応できるように計画しました。
居住スペース
断熱区画を施し、衣食住が完結できるよう動線計画がされています。
古民家ならではの居心地や大勢でも食卓を囲めるよう、畳を主とした和の空間で構成しています。
土間スペース
建物の約半分をしめる土間スペースは外部からでも直接アプローチができる計画となっています。
畑や田んぼを耕作している施主様が、一休みする時に利用したり
近所の方々が集う場になったりと多岐に渡る用途で使用されることを目的としています。
可変性のある空間
日本の建築は本来、可変性のある間取りが主でした。
障子やふすまを使用することで、生活様式に合った場をつくり、光の入り方を調節したり風景の切り取りを演出していました。
近年の住宅では少なくなったそのような可変性の高い空間を本物件では計画しています。
ディティールのかけら
蚕籠
蚕籠を手すりの一部として細工したり、壁材として利用することで養蚕の面影を演出しています。
天然素材
土や草、竹や木などの素材を形状や仕上げ方法を変えることで空間の質を変化させています。
風景を切り取る
周囲の風景が切り取られることで住まいの一部となり、季節や環境の変化を感じることができるのもこの場所の魅力の一つです。
古民家改修の記録をまとめています。
Data
- 構造木造2階建て
- 間取り7LDK
- 敷地面積-
- 建築面積159.89㎡
- 延床面積197.78㎡
- 竣工2024年9月
- 設計アーキトリップ/桑名翔太+平岡諒太
- 構造設計優建築設計事務所
- 施工株式会社アーキトリップ