前回は高い断熱性が暮らしに与える影響について、断熱性の高い家のメリットやデメリットとともにご解説しました。
注文住宅を計画の際に必ず断熱材の話がでますが、種類が多すぎて違いや特徴がわからない・・・
ということがほとんどかと思います。
そのような話を良く耳にするので、本記事では断熱材の種類や特徴を紹介していきます。
それぞれの断熱材の効果や費用を比べながらみていきましょう。
断熱材を選ぶポイントは?
断熱材を選ぶポイントは2つです。
- 住まいにどのくらいの断熱性をもとめるか。
- 原料を知り、コストや環境への影響を考える。
断熱材には様々な種類があり、原料も様々なので選択によっては環境への影響も大きいです。
住まいに求める断熱性は勿論ですが、それ以外にも視点を広げるとどの断熱材を選択するかの
判断がしやすくなってきます。
断熱材にはどんな種類や特徴があるのか?
断熱材とは、「室内の熱が室外」へ「室外の熱が室内」へ伝わりにくくするための材料のことです。
断熱材は様々な種類がありますが、下記の4つに分けることができます。
- 無機繊維系
- 発泡プラスチック系
- 天然素材系
- 木質繊維系
それぞれの特徴を解説していきます。
1【コスパが良く最も一般的なロックウールやグラスウール】無機繊維系
無機繊維系は、木造住宅で一般的に使用され、不熱性であることから壁や天井に使われることが多い断熱材です。
ガラスや岩などを溶かし繊維状にして、繊維の隙間に空気を閉じ込めています。代表的なものにロックウール、グラスウールがあります。
・ロックウール
主原料は玄武岩や鉄鋼スラグを原料とする断熱材です。アスベスト(石綿)と似ていますが、ロックウールに発がん性は確認されていません。安心して使用できます。
燃えにくいですが湿気に弱い特徴があります。
また、収音性に優れているため空港でも使われています。
・グラスウール
ガラスを溶かして繊維状に加工したものです。燃えにくく湿気に弱い特徴があります。
コストが低く、最もスタンダードな断熱材です。
2【吹付け断熱で利用するウレタンフォーム等】発泡プラスチック系
発泡プラスチック系はプラスチックを発泡させて気泡の中に空気を閉じ込める断熱材です。
水分に強く火災に弱いため、床下に利用されることが多いです。
代表的なものに、押出発泡ポリスチレン・ビーズ法ポリスチレン・ウレタンフォーム・フェノールフォームがあります。
・押出発泡ポリスチレン
ポリスチレンを連続で発泡させ固い板状にした断熱材です。
水や湿気に強く安全性が高いですが、熱には弱いのが特徴です。
・ビーズ法ポリスチレン
ビーズ上のポリスチレンを発泡させて製造する断熱材です。
水に強く軽く耐久性に優れているのが特徴です。比較的安易に加工ができるため様々なところで利用されています。
・ウレタンフォーム
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えて製造し、高い断熱性と省エネ効果が期待できる断熱材です。
透湿性や耐久性に優れていますが、高価であるのが特徴です。
・フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えてボード状に製造する断熱材です。
耐火性や耐久性にも優れ、不熱・準不熱材料の認定を受けているのが特徴です。
3【自然素材オンリーの住宅なら】天然素材系
天然素材系は、無添加で素材本来の特性を生かした断熱材です。天然の素材やリサイクル素材を使用するため環境にやさしいといわれています。
原料がほぼ海外輸入になってしまうため他の断熱材と比べて高価です。
代表的なものに、羊毛(ウールブレス)や炭化コルクがあります。
・羊毛(ウールブレス)
原料の70%以上が羊毛(ウール)でできた断熱材です。ウールは衣類や布団にも使われています。断熱効果のみならず調湿効果もあります。
国産の羊毛は少ないため海外輸入が主となり、他の断熱材と比べて価額も高くなります。
・炭化コルク
ワインのコルクやバージンコルクを製造する際に出た廃材を加工してつくる断熱材です。
断熱性の他に、調湿性や防虫効果があるのが特徴です。
そして天然素材であるため環境にやさしい断熱材です。
4【エコロジーな断熱セルロースファイバー】木質繊維系
木質繊維系は軟質の木材繊維を主原料とし、下地材として使われることが多い断熱材です。
断熱材の中では高価なものです。
代表的なものに、セルロースファイバーがあります。
・セルロースファイバー
古紙を再利用して綿状にしたものです。隙間ができないため気密性に優れていて、調湿性が高く結露が出にくいのが特徴です。
防火性や害虫の予防にも効果があるため、住宅のあらゆる場所で利用されています。
断熱材の熱伝導率と費用の比較
断熱性の効果は熱伝導率で示されます。これは熱の伝わりやすさを表しています。
値が低いほど断熱性が高いことを意味します。
断熱材を選ぶうえで効果や特徴も大切ですが、費用面も重要な部分です。
断熱材の効果と費用について以下の表にまとめました。製品によって差が生じますので、あくまで目安として参考にしてください。
<参考(身近にあるものの熱伝導率)>
・アルミニウム 200.000
・木材 0.130
・鉄筋コンクリート 2.300
断熱材 | 効果(熱伝導率※[W/(m・k)]) | 費用例(一棟当たり) |
無機繊維系 | ||
ロックウール | 0.035~0.047 | 約25~40万円 |
グラスウール | 0.033~0.050 | 約25~40万円 |
発泡プラスチック系 | ||
押出発泡ポリスチレン | 0.024~0.043 | 約50~80万円 |
ビーズ法ポリスチレン | 0.024~0.043 | 約50~80万円 |
ウレタンフォーム | 0.023~0.040 | 約65~100万円 |
フェノールフォーム | 0.019~0.036 | 約70~120万円 |
天然素材系 | ||
羊毛(ウールブレス) | 0.039~0.049 | 約50~60万円 |
炭化コルク | 0.037~0.045 | 約4,800円/㎡ |
木質繊維系 | ||
セルロースファイバー | 0.038~0.040 | 約95~160万円 |
最もスタンダードでよく使われているグラスウールは、一番安くなります。
一方で希少性の高いセルロースファイバーは最も高く、グラスウールの約4倍の費用がかかります。
断熱性能が高くなるほど、当然のごとくコストもかかります。
まとめ
断熱性は家の完成後、目にはみえないものとなります。
しかし、断熱性が暮らしの快適性と強く関係していることは事実です。
たくさんある断熱材について何を重要視するのか目的を定め、選択することが大切です。
専門家と相談しながら快適な住空間をつくっていきましょう。