庭先まで生活の豊かさが広がっていくような家
敷地は福島県須賀川市の郊外にあります。
400㎡ほどの敷地は十分な広さがあり、周辺の豊かな自然環境も相まって、広々と気持ちの良い場所でした。
建主は若いご夫婦と小さなお子さん2人の4人家族で、初めてお会いした時には、これからの生活への期待感や、自ら暮らしをつくっていくことへの前向きな姿勢を感じました。
恵まれた敷地環境の中での家づくりだったので、ご家族の暮らしが家の中だけで完結するのではなく、庭先まで生活の豊かさが広がっていくような暮らしをご提案しました。
回遊型で連続性のあるプラン
家の中心部に水回りをまとめて配置し、その周りをぐるりと囲むように生活スペースをつくっています。
行き止まりがなく流動的な空間なので、子供たちは家の中を自由に走り回り、のびのびと過ごすことができます。
生活空間が連続していくことで、違う場所にいる家族の存在をどことなく感じられたり、自然とコミュニケーションが生まれやすくなるような計画としました。
土間と軒下で内と外をつなげるきっかけをつくる
家の周りにも土間と軒下の空間をつくっています。
土間は家の周りを一周でき、腰掛ければ家族で過ごす縁側のような場所になります。
地面に向かい裾を広げたような形の土間は家の内と外を緩やかにつなげる役割を持っています。
敷地全体の豊かな環境を暮らしの中に取り入れ、住みながら色々な楽しみを発見していけるような家を考えました。
広すぎない大きさで広がりのある生活をつくる
内部空間は天井を作らず屋根裏までを一体的に構成することで空間に広がりを持たせています。
また、土間に面する窓は掃き出し窓とすることで視覚的にも外部への広がりや連続性を感じやすくしています。
内部空間の面積だけをみると約60㎡とコンパクトなつくりですが、外部空間(土間と軒下の空間)の面積を含めると、約100㎡の大きさになります。
家の大きさに比例して、建築費や光熱費、メンテナンス費が変わってきます。子育てをしている世代は大きな家をつくりがちですが、
将来的に家族構成が変化していく中で、掃除や日々の手入れが行き届きやすく、暮らしを重ねるごとに愛着が湧いていくような住まいを考えました。
家族と共に成長していく家
室内は木造軸組の現しとし、DIY好きなご主人が色々と手を加えやすいように多くの内壁はラワン合板張りを採用しています。
また梁の下端にはあらかじめ、間仕切りやカーテンレール用の溝を掘っていて、
家族のライフステージや将来的な変化に合わせて、空間を区切ったり、拡張したりと柔軟に対応できるように配慮しています。
生活の彩りが加わっていくことで、家族と共に成長していくような住まいのあり方を目指しています。
家づくりの旅路
この家が完成するまでのストーリーをお施主様に伺ってみました。
Q1.家づくりのきっかけをお教えください。
ちょうど2人目の子供が生まれて数ヶ月のタイミングで、転職を機に地元の福島に戻ることになりました。
せっかく田舎の福島に行くので、少しでも自然を身近に感じられるような生活がしたいと思い、このタイミングで家づくりをしようと決意したのがきっかけでした。
Q2.どのような家にしたかったですか?
同じ家に居ても家族同士が別々の場所で分かれて暮らす家ではなく、
どことなく気配を感じられたり、自然とコミュニケーションが生まれるような家が理想でした。
加えて、庭を含めた外の環境を家の中に居ても感じられるような広がりのある家にしたいと思いました。
また、子供の成長やライフステージに合わせて家を作り変えていくことが出来るということも希望でした。
Q3.家づくりの際にこだわったポイントをお教えください。
デザインとして心地よい空間であること、作り込み過ぎずにシンプルで余白を持たせること、外部との繋がりを感じられることなどが、私たちが求める主な条件でした。
デザインに関してはネット上で好みの写真をお見せしたり、言葉でお伝えしました。
ただ、どことなくお二人(平岡さん、桑名さん)の雰囲気から、あとはこの人達に任せれば大丈夫という不思議な安心感やフィーリングを感じていたので、設計の部分はお任せしました。
初めてプランのプレゼンテーションを受けた時には、想像していなかった内容だったので驚きましたが、
その後、具体的な設備・器具などを選んでいく時に、私たちが好きなテイストのものは大体どんなものでも建物の雰囲気に馴染むような設計だったと感じています。
Q4.設計中、工事中に大変だったことはありますか?
私たちが大事にしたいデザインの部分で、実際に内装などを具体的に決めていく際に、建材がひとつ異なるとイメージが大きく変わることも多く、その選定にとても気を使いました。
そのような時にも、CGなどを使用しながら出来るだけ私たちがイメージしやすいようにサポートして頂けたのは、とてもありがたかったです。
また、工事中は実際に施工する工務店さんとの橋渡し役になってくださり、私たちから直接工務店さんに言いにくいようなこともお伝え頂きながら進められたので、
そこまで大きな大変さや不安などはなく、完成まで辿り着くことが出来たという感じがします。
Q5.お住まいになった感想をお聞かせください。
一言で言うと最高です(笑)
デザインとしての心地よさ、実際に暮らす上での暮らしやすさがどちらも満たされている感じです。
我が家は延床面積が20坪程度で、よく見る建築事例だと夫婦2人で暮らすくらいの広さだと思います。
ただ、私たちは子供が2人いる4人家族なので最初は本当にこの広さで暮らせるのか不安でした。
でも実際に住んでみると、全く不自由さはなく、むしろコンパクトでとても暮らしやすさを感じています。
また家族がそれぞれ別のことをしていても、お互いの気配を感じながら暮らせる空間なので、家族同士の心の結びつきもこれまで以上に強くなった気がします。
これも既成概念にとらわれた設計ではなく、私たちの考え方や暮らし方を本当に考えた上で設計してくださったアーキトリップさんだからこそだと思います。
家は単なる建物ですが、そこにアーキトリップさんや関わってくださった方の思いを感じると、単なる建物ではなく生き物のように思えて、すでにとても愛着が湧いていますし、
この家と一緒に年を重ねることが楽しみでもあります。
そう思える家づくりを出来たことが私たちの大きな財産であり、改めてアーキトリップさんに感謝をお伝えしたいです。ありがとうございました。
Data
- 構造木造平屋建て
- 敷地面積417.28㎡
- 建築面積57.96㎡
- 延床面積57.96㎡
- 竣工2023年3月
- 設計アーキトリップ/桑名翔太+平岡諒太
- 施工株式会社リンクス